日本人の「がん」の状況について

生活

最近、私の親戚が胃がんになり、胃の1/3を切除する手術を受けました。普段は全く健康だったので、とても驚きました。本人も全く胃の痛みもなかったそうで、あらためて「がん」という病気の怖さを知りました。それで、日本人に多い「がん」は?男女別になりやすい部位とは?などを調べてみました。

がん罹患率(数)と死亡率(数)

日本人の「がん」にかかる確率(罹患率)は年々増えていますが、早期発見・早期治療や医療技術の進歩などによって「がんの死亡率」は減少していることが分りました。

また、少し古いデータですが2010年の国立研究開発法人国立がん研究センターによると、がんの発症部位、死亡数は男女で異なるようです。

2010年に新たにがんになった人は約81万人、2012年にがんで亡くなった人は約36万人にも上るようです。

男女別がん罹患数 (部位別)

男女別がん罹患数 部位別トップ5

※男性※
1位 胃がん
2位 肺がん
3位 大腸がん
4位 前立腺がん
5位 肝臓がん
※女性※
1位 乳がん
2位 大腸がん
3位 胃がん
4位 肺がん
5位 子宮がん

男女別のがん死亡数は罹患数と見比べて、同じ順位ではないことがわかります。これは「罹患しても治るものがある」ということが言えます。

男女別の死亡数 部位別トップ5

※男性※
1位 肺がん
2位 胃がん
3位 大腸がん
4位 肝臓がん
5位 すい臓がん
※女性※
1位 大腸がん
2位 肺がん
3位 胃がん
4位 すい臓がん
5位 乳がん

男女ともに「すい臓がん」がランクインし、女性の「乳がん」は罹患に比べると死亡が下がっていることがわかります。

「がん検診」について

生涯で2人に1人が罹患(りかん)する身近な病気であり、日本人の死因で最も多い「がん」。その早期発見・治療を目的とするのが「がん検診」です。

しかし、書籍や雑誌、ネットでは、「血液検査でがんを発見できる」「がん検診は受ける意味がない」など、様々な情報が飛び交っています。

実際、がん検診にはメリットとデメリットがあり、何をいつ受けるべきかの「正解」は、年齢、性別、家族歴などにより、一人ひとり異なります。「今、何の検診を受けるべきか」について考えるためのヒントを調べてみました。

がん検診は「見逃し」や検診による「合併症」もあるようなので万能ではないですが、がん検診は自覚症状がない健康な人を対象に、がんを早期発見し、適切な治療により、がんによる死亡率を低下させることを目的としています。

早期がんではほとんど自覚症状がありません。そのため、症状が出て受診した人の多くは、進行したがんとして発見されます。症状が出る前ならば治癒する確率も高く、体への負担が少ない治療を受けられ、治療後のQOL(生活の質)も保てます。

また、子宮頸がんであれば子宮頚部上皮内腫瘍(CIN)、大腸がんであればポリープなど、がんの前段階(前がん病変)での治療により、がん化を防ぐことが可能です。

がんがある人を「異常あり」と正しく判断する割合(12ヵ月以内にがんと診断されるもの)は、60~80%程度です。検診を受けても、見逃されてしまうケースもあります(偽陰性)。要因は、検診機器の限界、医師や検査技師の技量と技術の問題などさまざまです。

反対に、「がんの疑いがある」と判定されて精密検査が行われた結果、問題がないケース(偽陽性)もあります。

検診により起きる合併症(偶発症)もデメリットの1つです。内視鏡検査では胃壁や腸壁に穴があく「穿孔(せんこう)」が起こります。エックス線(レントゲンなど)検査や、CT(コンピューター断層撮影法)検査などによる放射線被曝で、がんを誘発することもあります。

肺がん検診で行う胸部エックス線検査や、乳がん検診で行う乳房エックス線撮影 (マンモグラフィ)における放射線量は比較的少なく大きな問題とはなりませんが、胃がん検診で行う胃透視検査(胃バリウム検査)の被曝量は極めて多いとのことです。

がんには、発がん後の進行が非常に早いもの、遅いもの、また進行しないもの、一部退縮するものもあります。

多くの胃がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がん、喫煙歴のない人の肺がんは、進行が緩やかで症状が出るまでの期間が長く、定期的に検診を受けていれば症状が出る前にがんを発見できる可能性が高いです。

しかし、白血病、悪性リンパ腫、喫煙者が罹患する肺がんなどは、発病してから症状が出るまでの期間が数ヵ月から数週間と短く、早期発見は困難です。

一方、甲状腺がんや前立腺がんをはじめ、進行が非常に遅く、寿命に影響しないがんを診断(過剰診断)し、治療することもあります。

ただ、過剰診断になるかどうかは、がんが発見される年齢にも左右され、高齢になるほど過剰診断の影響が強く出ます。また、どのようながんが致死的ながんに移行するかは多くの場合、判別できません。

がん検診の限界を理解した上で、早期発見・早期治療につながる検診を受けることが大切です。

「人間ドックの方が優れている」は誤解

どのようながん検診を、どこで受診すれば良いのでしょうか。

がん検診には、国の健康増進法に基づき、市区町村の住民を対象として行う「対策型検診」と、個人が私費で行う(一部もしくは全額を負担する企業もあり)人間ドックなどの「任意型検診」があります。

対策型検診は、住民全体のがん死亡率減少を目的としています。費用の全額もしくは一部を公費で負担しており、無料もしくは低額で受診可能です。

市区町村で行うがん検診に関する国の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」では、胃がん、肺がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がんが検診の対象とされており、同指針では、検診の推奨レベルや、市区町村における実施体制、精度管理についても規定しています。

ただし、指針で推奨しないがん検診を実施している自治体や、対象年齢外で実施している自治体もあるので注意が必要です。

任意型検診は、個人の死亡リスク低減を目的とし、検査項目も検査方法も選択可能です。全額自己負担で行い、最新の検査機器や検査方法を選べますが、科学的根拠(エビデンス)が確認されていない検診も含まれています。

法的根拠に基づく検診ではないため、実施体制、精度管理などは、施設でそれぞれ異なり、必ずしもがん検診に習熟した医師や臨床検査技師が検診を行うとは限りません。事前にウェブサイトなどで、どのような医師が検診を担当するか確認したほうがよいようです。

国が推奨する「5つのがん検診」をチェック

対策型検診と任意型検診で、推奨される検診方法は異なりますが、ここではスタンダードな対策型検診をベースに、国で推奨する5つの検診に関するポイントを説明します。

なお、対策型検診と任意型検診の比較は、国立研究開発法人国立がん研究センターで、社会と健康研究センター検診研究部による「がん検診マネジメント 精度管理・受診率向上対策」をご確認ください。
また、男女で罹患しやすいがんは異なります。またそこに至るまでの原因も異なります。

○肺がん(男女共通)

約10.7万人が新たに罹患し、最も死亡率の高いがんでもあります。喫煙との関係性も深く、喫煙者の周囲の人にも影響を及ぼすため(副流煙)、たばこを吸わない人にも発生します。

肺がんには、肺野部と肺門部、それぞれにできるがんがあります。タバコの影響を受けやすい肺門部にできるがんは、痰(たん)にがん細胞が交じりやすいので、1日に吸うたばこの本数と喫煙年数をかけた「ブリンクマン指数(喫煙指数)」が600以上の人(過去の喫煙者含む)は、問診と胸部エックス線検査に加え、喀痰(かくたん)細胞診を併用します。

精密検査は低線量CTで行いますが、任意型検診では検診として行われることもあります。近年、早期に小さな病変を検出できるCTを、肺がん検診として行う施設も増えてきています。

○胃がん(男女共通)

約12.6万人が新たに罹患し、肺がんに次いで死亡率が高いがんです。塩分の多い食事が原因で発症することが多く、ピロリ菌感染がさらにがん化を促進します。しかし、日本では近年減少傾向にあります。

胃がんの検査方法として推奨されているのは、胃透視検査と胃内視鏡検査です。胃透視検査は、バリウム(造影剤)と、胃を膨らませる「発泡剤」を飲み、エックス線写真を撮影します。

内視鏡を口や鼻などから挿入し、食道、胃、十二指腸を直接観察するのが胃内視鏡検査です。小さな病変を発見でき、食道がんも早期で発見しやすいという利点があります。

また、胃透視検査でがんが疑われた場合の精密検査としても使用されますが、高度な技術を必要とする検査です。

なお、胃がんを患った人の99%がヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)に感染しており、逆に感染歴がなければ胃がんのリスクは非常に低くなります。

とはいえ、ピロリ菌の除菌で発がんリスクがゼロになるわけではないので、除菌後も5年に1回程度、検診は受けた方が良いでしょう。

○大腸がん(男女共通)

約11.9万人が新たに罹患し、女性のがん死亡率が最も高いがんです。食生活の欧米化に伴い増加し、飲酒との因果関係も指摘されています。男女ともに40歳代後半から罹患率が増加しているので注意が必要です。

大腸内にあるがんやポリープによる出血を検出するのが便潜血検査です。一度でも陽性になったら、大腸内視鏡検査で精密検査を行います。内視鏡を肛門から挿入し、直腸から盲腸までの大腸を直接観察する方法で、任意型検診では大腸がん検診として行われることがあります。

ただ、がんやポリープに対する診断精度は高いものの、胃の内視鏡検査同様、高度な技術が必要とされ、熟練した医師は多くはありません。出血や穿孔、また脳梗塞、心筋梗塞などのリスクが高齢者ほど高くなります。

○子宮(頸)がん/乳がん

※子宮がん/約2.3万人が新たに罹患し、子宮の入り口付近に発症することが多く、ヒトパペローマウィルスに感染することで若い世代で増加しています。また、子宮の奥に発症する子宮体がんは閉経後に急増します。

※乳がん/約6.8万人が新たに罹患し、30~40歳代で罹患率が急激に増加します。マンモグラフィ検査や触診などで早期発見が可能です。また、外科的手術の後に乳房再建などの術法も進歩しています。

子宮頸がんと乳がんの検診は女性が対象となります。乳がんは男性もかなり少数ながらも罹患します。視触診は、乳房を観察し、しこりの有無を判断する方法ですが、小さなしこりは発見できません。

現在、唯一エビデンスが確立された検査方法が、機械で挟みこんだ乳房にエックス線を当てて撮影する「マンモグラフィ」です。

早期がんのサインといわれる石灰化(カルシウムが沈着したもの)の発見に適していますが、特に日本人の若い人に多い「高濃度乳房」の場合、しこりを見逃す可能性が高いというデメリットがあります。

超音波により乳房の病変を検査する乳腺エコー検査では、高濃度乳房の人のしこりも見つけられます。現在、日本ではマンモグラフィとの併用による有効性を調べる研究が行われており、40代の女性約7万人を対象にした臨床試験で、早期がんの発見率が高まることが報告されましたが、死亡率減少効果の有無については臨床試験が進行中で、結果が出るまでにあと8年ほど時間を要します。

乳腺エコー検査は、医師の技量により結果が大きく左右される検査です。技術を習得した医師が少ないのが現状ですが、日本乳がん検診精度管理中央機構が、マンモグラフィ読影認定医師を公表しているので、もし検診を受ける際には参考にするといいでしょう。

血液検査やPET検査で本当にがん発見は可能?

「血液検査でがんを発見できるのでは?」という方もいるでしょう。がん細胞の中には、そのがんに特徴的な物質を産生するものがあります。血液中で測定可能な物質が、「腫瘍マーカー(目印)」です。

腫瘍マーカーが上昇すれば、体内のどこかにがんがある可能性が高まります。だだし、検出力が低く、偽陰性や偽陽性が多いので、治療の経過や再発のチェックには有効ですが、一般のがん検診には適しません。

なお、腫瘍マーカーの多くは、進行がんになってから数値が上昇しますが、早期がんの段階で上昇するものも一部あります。その1つが、前立腺がんの腫瘍マーカーとなるPSA検査です。指針で推奨されていませんが、採血だけで診断できる手軽さもあり、多くの自治体で前立腺がん検診が行われています。

約6.5万人が新たに罹患し、近年増加傾向にありますが、PSA検査によって発見が容易になったこともあり、早期に発見できれば手術や放射線治療で治すことが可能です。

ただ、前立腺は肛門や陰茎と距離が近く、治療する際に周辺の臓器に影響が及び、排尿障害や排便障害、尿漏れ、勃起障害などを起こす確率が低くありません。

また、前述の通り、進行が遅いのが前立腺がんの特徴です。排尿障害が起こりやすい前立腺では、それがたとえ前立腺肥大による症状だとしても、一度がんと診断されてから治療を受けないことを選択するのは難しいのが現状です。そのため、そもそも検査を受けるかどうか、慎重な判断が必要です。

PET(陽電子放射断層撮影)検査は、放射性物質とブドウ糖に近い成分(FDG)を含む検査薬を注射し、体内分布をカメラで撮影してがんを発見する方法です。

甲状腺がん、頭頸部がん、悪性リンパ腫の発見に非常に有用とされていますが、食道がん、肝臓がん、胃がん、前立腺、子宮頸がん、腎がん、膀胱がんなどには有用性が低いとされています。「全身を1回でチェックできる」夢の検査ではありません。

最後に

如何でしたでしょうか。

性別と年齢により、がんの発症ピークは異なります。自分の年齢や性別に合わせ、適切な時期に定期的にがん検診を受けましょう。

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